帰る記憶の場所

 

産まれ育った土地で9年ぶりに暮らし始めて

何度か瞬きしているうちに季節は一巡しようとしている


朝の日が浮かび上がらせる稜線

小さくて強い草花達に覆われた畦道

新鮮で苦い山菜
艶をます雨上がりの夜更け 

暑さを助長する蝉の声も遠のくような青田
柔らかい光が躍る川面

静かに髪に舞い落ちてくる重なり合った真っ白な結晶達
音も温度も匂いもすべてつつみこむ降りつもる雪

 

もはや好きや嫌いの言葉とは遠く離れたところにある存在


もし二度と帰れなくなっても
もし変わり果て消えてしまっても
ここで産まれ暮らし感じた喜びは忘れないようにしよう

 

帰ることができる記憶の場所をあたえてくれてありがとう